コラム

仕組まれたアリバイ工作?その手法とは??

浮気する男性、女性。何年経っても不倫はおさまりません。この世から消えない限り探偵業はなくなりません。人の浮気で飯を食っているため大手をふるって「浮気反対!」なんてことは言えない。これが探偵の性。本日はそんな不倫をこともあろうかアリバイ工作によって探偵の眼を欺いたという女の小話を一つ。

依頼人は男性。つまり対象者はその妻。どうやら最近奥さんの行動が怪しいらしい。こそこそトイレに携帯をもっては30分以上トイレに籠っている。トイレに30分もいて何をしてるんだ??そんなにすごいのが出るのか?最初のころはそう思っていたが毎日のように長トイレのため疑いだしたらしい。ただそれ以外はしている証拠は一切なく、メールを盗み見るも電話帳を見るも怪しい影は無い。手帳には実際の行動が書いてある。さらに奥さんはSNSのチェックイン機能を利用し居場所を配信している。わざわざ居場所を教えることは考えられない。それでも相談者は胸騒ぎがするようだ。奥さんは結婚前に過去にもしていたことがあり、それは奥さんのメールを見て知ったらしい。その時と奥さんの反応やご主人への対応が同じような感じらしい。

こうなってくるともう調べるしかほかはない。ほとんどの場合は浮気が確定しているが浮気相手がわからない、証拠がほしいといった内容だが、稀にこのような形で依頼に至るケースもある。もちろん”シロ”の場合もあるのだが、人間の本能なのか潜在能力なのか”クロ”のことが多い。後者の場合、その先は泥沼化するのがほとんどだ。

していようとしていなかろうと方法は一つ。要は奥さんを尾行する形だ。ただ今回の場合いつしているのかが皆目見当がつかない。そんな中で闇雲に行えば費用が高くなるだけ。効率のよい調査はするであろう日時を予測し、そこをピンポイントで行う。情報が無い場合、それができないため依頼人の希望する日時にするという形だ。ほとんどの場合が週末になるが、週末は家族と過ごす場合は平日に行う形が取られる。

ただ今回の場合重要となるツールがある。SNSのチェックイン機能だ。対象となる妻は適時現在の場所を知らしてくれる。自発的にGPSで居場所を知らせてくれるという代物だ。相談者からそのチェックイン場所に急行してもらいたいという要望があったため、そのような方針を取り入れた。

当日。
「●●にチェックインしました」

依頼人から情報が入り、奥さんがチェックインしたポイントが送られてくる。どうやらとあるBARで友人と飲んでいるようだ。最近ではそんなこともわかってしまう。自身の身元を明かすことで交友関係は増えそうだがそれによってトラブルも招くこともあるだろう。例えばその情報をストーカーが見ていたら大変なことになる。誰しもストーカーになりえる素質は持っているわけで、私からしてみれば、そんな情報を晒すこと自体が危険なのでは?と日々思ってしまう。ただこちらとしては場所を教えてくれるため負担が少なくて済む。仮に見失ったとしてもその機能を追い切ればよいのだから。

と現場に急行し、店の中に潜入する。
ここで女性と一緒にいれば本日は不発。きょうの奥さんの行動は”シロ”。ただ男性といればとことん追い続け証拠を取り浮気相手の宅割りという流れになる。”残念”か”正解”か昔あった番組、クイズ番組の答えを待っているときのような感覚が味わえる。

で、結果はどうだったかというと。。。

対象者居ず。店にいたのは女性のグループと男性一名だけ。
そのBARにいると思われたはずの対象者がいない。チェックインしてから10分程度。急行したもののその店が開いてから1時間程度だが、オープンと同時に入店し、店を出るときにチェックイン機能を使った可能性も考えられる。店に入って1時間程度で出てしまうとは。その旨依頼人に報告。結局その日は捕捉できなかった。

気を取り直して再度同じように行う。前回と同じように依頼人から報告が入る。
今回は前回のBARと近い別のBAR。今回こそは捕捉する気持ちで急行。

しかしまたも対象者の捕捉が出来ず。
前回と同じように女性グループが店内にいるだけ。
と一つ疑問が出てくる。

対象者は前回も今回もいなかった。
前回と違うBARだが地域は同じ。
店に入ると女性グループがいる。

しかも、その女性グループは前回の時に見た女性グループ。対象者はおらず女性グループはいる。これは偶然なのかそれとも理由があるのか。もしかしたら…。この件を依頼人に報告し、再度を行う形となった。2回同じ方法で不発なのであれば別の方法で行うしかない。チェックイン機能が意味を成さなくなった今、できることは奥さんを追う、普通の方法となった。

当日。予想されたとおり奥さんは自宅を出る。服装から考えるに買い物などではなく誰かと会いそうだ。こうなってくるとボルテージが上がる。心の中で「浮気っ!浮気っ!!」とコールしてしまうのは私だけなのかそれともみんなそうなのか。浮気の可能性が高くなるにつれ、探偵魂がビートを奏でる。

奥さんが男性と合流。田端は探偵魂が8ビートまで上がった。
奥さんが男性とともに個室居酒屋に入る。田端は16ビートまで上がった。
奥さんが手をつなぎホテル街へ。田端は32ビートまで上がった。
こんな感じでホテルへの入りを撮影。ホテルに入れば”どんだけ男性側が早かったとしても”小一時間は出てこない。そのため状況を報告する。この報告作業が結構大変だ。

とくに浮気をしているか分からない状況での報告は依頼人に衝撃の事実を伝えるのと同じ。医者がガン患者に「あなたはガンです」と伝えるようなものだ。伝え方次第で相手の衝撃度も変わってくるでしょう。「あの~大変申し上げにくいんですが…」というのが理想の切り出し方なのかそれとも「奥さん…してましたよ」と事実を伝えるのがよいのか。この部分は結構気を使うんです。「奥さん」と「してましたよ」の間は一拍おくべきなのか、さらっと言うべきなのか…。いろいろ悩んだ末、いつも通りの言い方となる。

「ここまでの経緯を報告します。●時に男性と合流し個室居酒屋に行きました。その後…」

探偵は事実を伝える業務である。ありのまま報告する。依頼者もそれを目的としているわけで、そうすればよい。落胆する人もいる。喜ぶ人もいるだろう。ただそれが事実なわけで変えようがない。どちらにしても報告書としてもらうわけで言い回しを変えたとしても事実は伝わってしまう。それなのであればありのままを話そう。それが探偵である。

と事実を伝えるも、依頼人はなんだか反応が悪い。
あんた奥さん浮気してんだよ。今の状況わかってんの!?と声をあげたいところだが理由を聞くとこうだ。

「妻のチェックインは前回調査で行っていたBARなんですが」

まさかこんな手の込んだアリバイを使っているとは思いませんでした。
奥さんのSNSのチェックイン機能を使っていたのは奥さんではなく奥さんの友人。つまりBARにいた女性グループの一人。後にわかったことだが、その女性と奥さんは旧知の友人で、お互いが浮気を”幇助”していたとのこと。奥さんがいるわけがない。奥さんのチェックインはその女性のチェックインだから。アリバイをお互い作るためお互いが替りにSNSを操作していたのだとか。

GPSはあくまでも補助機能。現地に行かなければ実態はつかめません。その裏を掻いた”悪質な犯行”だった。警察が関与すればログなどを請求することで判明するが、浮気は民事。そんなことでログを請求なんてできません。それを知っていたのかは分かりませんが、まさかこんな形で協力者がいて用意周到にアリバイを作っていたとは。

現場ではいろんなアリバイ作りを見てきましたが、この手法は驚きでした。というよりここまでするんだったらなんで結婚してるの??と疑問に思ってしまいます。チェックインしている、SNSにコメントがあるから安心なんて思っているあなた。実はそんなアリバイ工作をされているかもしれません。 この結果を持って、依頼者様は奥様と離婚するか、別れさせ工作を依頼するか考えるそうです。