「…でですねえ、ヤクザのような男が登場してあの野郎を脅しつけてですねぇ…」
FAX探偵さんの事務所で、俺はまくしたてていた。目の前には、妻が不貞を働いていた動かぬ証拠写真が。コーフンしない方が無理だって! 俺は思いつく限りの作戦を探偵さんに提案している最中だった。どれもこれも、見事なストーリー。我ながら惚れ惚れしちゃうよ、うん!
「いやいや、ちょっと待ってください。う〜ん、どれも現実的とは言えないですねぇ…」
ウソ? 何で? ヤクザみたいな人間が証拠をネタに野郎を追い詰めて行けば済むじゃん。バッチリじゃん。「それじゃ恐喝になってしまいます。ここは、こちらに任せてもらえませんか?」
あ、そう…。せっかく徹夜で考えたのに。やけに冷たいじゃん、Nさんときたら。あれもこれもダメ出ししちゃってさ。そりゃ、俺はシロウトだよ? でも、妻のことなら、俺が一番、良く知ってる。どんな感じになれば、面倒になって不貞を止めるかもね。それなのにさ、言ってるそばからさ、ブツブツ…。
「現実的な作戦を申し上げますね。整った証拠はフルに活用します。まず、相手男性に対して…」
話を中座してゴメンよ。それって、現実的なの? いやはやシロウトの俺にはいささか無理があると思うんだけどね。その工作は。
だって、Nさんったら、女性工作員を野郎に近づけてちょっといい感じにさせ、今度は、その女性工作員に片思いしてる男性工作員が登場。ふざけんじゃね〜って感じで野郎の奥さんにバラしちゃう。で、ゴタゴタにして妻とも遊べないようにしちゃうって言うんだよ?しかも、異性が接触する工作って本来はあまり使わないらしい。あえてその作戦を使うのはどうなのよ?!! この間の証拠は、その女性工作員が野郎に接触したあと、野郎が妻と会っていたというかたちの証拠にすればいいと。
ホント〜? Nさん。うまくいくのぉ〜?
「対象者の車がフェラーリというところも接触のネタとして使えますから。そういう切り口は逆ナンパされて浮かれない男はいませんからね。接触自体は問題なく遂行できると思います。」
って、カンタンに言うじゃない、Nさん。いくら実績あるって言われても、妻と熱〜くなってる最中なんだよ、野郎は。
「疑心暗鬼なお気持ちはよくわかります。一応、作戦実行の前に、担当の女性工作員を紹介しておきますね」
Nさんに呼ばれた女性工作員が部屋に入ってきた。
「よろしくお願いします。工作を担当するSです。近藤さんの案件は、調査にも加わっているので詳細は把握しております。ご安心ください。彼のツボも心得てますから」(笑)
OH! びゅ〜ちほ〜! ゴメンよ、Nさん。疑ったりして。それならそうと早く言ってよ。人が悪いなぁ。美人工作員を目の前にして俺は作戦の成功を確信した! 彼女の逆ナンだったら、妻LOVEの俺でも、危うい一線を越えたくなっちゃうかも。イケるよ、Nさん! やっぱプロだよ、アナタたちは!
「それでは、作戦開始ということでよろしいですか?」
よろしいも何も、エクセレントっすよ、グレートっすよ、NさんのNはNICEのNだよ!
家に戻り、何食わぬ顔で妻の作った晩飯を食う俺。
「何ニヤニヤしてんの? 変なの」
ヤバ! 笑ってた? 俺。
「い、いや、仕事で課長から褒めれてさ。でも、今夜は疲れたから先に寝るよ。おやすみ」
「うん。おやすみ!」
俺が寝てから、野郎と連絡を取り合うんだろ。寝るって言った瞬間、ウキウキした声出しやがって。まあいいさ。もうすぐ極上の“駒”が舞台に上がろうとしているんだから。フフフ…。野郎の悔しがる顔が目に浮かぶ。
実行の日に胸を躍らせつつ床についた俺なのであった。
が、胸踊り過ぎて、また寝れなくなっちゃった(汗)