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「別れさせ工作」 東京都武蔵野市 30代 男性 会社員 近藤さん(仮名)より

調査編・・・「3.ハイテク追跡&現場確保!」


「オマエの動きは全部、わかってたんだよ! お台場に行っただろ? しかも“誰かの車”に乗ってな!」

「ええ〜、ど、どうして知ってるの? じゃなくて、行ってないわよ! あ、あ、そのぅ…」

夢だった。目が覚めたオレは、ユダレでグッショリになったテーブルに顔を埋めていた。しかも職場で…。女子社員の冷たい視線が突き刺さる。そんな目で俺を見るなよセニョリ〜タ。今日は、俺にとって特別な日なんだよ。希望に満ちた決戦の日なのさ! 内容は言えないけど。緊張のあまり、一睡もできないままでいた俺。あろうことか、仕事中に電池が切れてしまったのだった。小細工がバレたときの言い訳を考えるのに心血を注ぎ、上さんに無事、手渡すことが出来た安堵感から沸き起こった睡魔。俺はカンタンに負けてしまったのだ。おいおい、ちゃんとノルマはこなしてるじゃん。そんな恐い顔しないでよセニョ〜ル! こういうとき、上司の近くに座る俺は不利なのだ。必殺の“キラースマイル”も通用しそうにない。

「失礼しました。昨晩、遅くまでプロジェクト内容をまとめていたもので。ハハハ…」

「では、今すぐ提出できるということだね? どこにあるんだ?」

「あ、うう、痛てててっ! ちょ、ちょっと失礼します」

いまどき、危機回避に腹痛を使う大人なんて居るワケはない。いや、ココに居た…。イカン、イカン。何か言い訳を考えなきゃ。とりあえず大の方に篭もるとするか…。アレ、ウソなのにパンツ下ろしちゃってるよ。俺のバカバカ! 慌てなさんなって。

しかし、上さんの方はどうなってるの? 携帯の信号を監視しながら行動しなければいけないため、リアル・タイムな報告は難しいかもって、Nさんは言っていた。が、気になる。チョー知りたい! すると、携帯のメールが鳴った。お、探偵さんからだ! 現場の状況を逐一、教えてくれというオレのオファーをちゃんと実施してくれたのだ。融通の利く探偵さんとのタッグは、とても心強い。

『ご連絡が遅くなりました。ご心配なく。信号のモニターは順調です。ターゲットが高速道路を使って移動していたので、追跡に集中しておりました。ご自宅付近から東へ向かい、JR○×線の△駅付近に居ります。それにしてもスゴいスピードでしたよ(笑)』

ククク、頑張っているようだね、携帯ちゃん! その調子、その調子。希望の光が見えてきたゾ。

『フム、そのまま続行してくれたまえ!』

と、返信。あ、パンツ履かなきゃ…。そうだ、しばらくココに引き篭もろう! うん、それがいい。セニョ〜ルも相手がトイレに入っていたんじゃ、しつこくは出来ないだろうし。お、第2の着信アリ!

『停車しました! JR○×線の△駅南口付近です。さっそく現場に急行します!』

そのエリアはたしかラブ・ホテル街じゃん! ついに尻尾を掴んだゾ。よくやった携帯ちゃん! コンコン。

「大丈夫かね? 具合が悪いようなら早退しても構わんよ。ん、君、泣いているのかね?」

こんなタイミングで様子を見に来ないでよセニョ〜ル。俺は今、それどころじゃないんだからさぁ。

「だ、大丈夫です。でも、かなり痛みをともなってますんで、できましたら…」

まあ、渡りに舟ということで、お言葉に甘えさせていただくとするか。我ながら見事な“引き篭もり”作戦だったなぁ。

「ただ、痛みが和らぐまで、もう少しココに居ります。う、うう〜!」

きっと、セニョ〜ルは訝しい顔して戻ったことだろうよ。フフフ。しかし、今日の俺は上さんの件に集中しなければいけないんだ。まさに、正念場。幸せな日々を取り戻すために。お、続々と情報が入ってくるゾ!

『信号がピンポイントで差している建物の前に到着しました。ラブ・ホテルです!』

YES! とうとう、やったゾ! 振り返れば苦しい日々であった。プロの探偵さんをも困惑させてしまう野郎の行動パターンに、一時は打つ手なしかと思ったもんなぁ…。八つ当たりしちゃってゴメンよ、探偵さん。でも、やっぱりプロは違う。なんとかしてくれちゃうんだもん! まさか、携帯というオプションがあったなんて…。ニクいよ、Nさん! しかし、何だなぁ。今までは上さんたちの動きにばかりに気がいってたけど、尻尾を掴んだとたん、まだ見ぬ野郎への憎悪が湧いてきた。人の家庭をグチャグチャにしやがって! しかも、フェラーリなんか乗りまわすとは。フェラーリ? そういえば、特定したとは言ってたけど、車を見付けたとは言ってなかったなあ、探偵さんは…。そこんとこどうなの?

『駐車スペースはシャッターで仕切られているため、車の確認はできていません。しかし、場所はココに間違いないでしょう。張り込めば映像証拠を入手できると思いますが、どうでしょう?』

『フム、やってみよう!』

出た、ゴルゴ13節! GPS携帯作戦を聞かされたときも、こう返してうまくいったもんなあ。ジンクス、ジンクス。信じるよ、探偵さんの勘を。

トイレ引き篭もりもすでに3時間経過。ココは、現場の探偵さんとともにひたすら待つしかない。すると、5時少し前に着信が! 出たか、ついに?

『今、ターゲットの車が立ち去って行きました! 間違いなくターゲットのフェラーリで、相手男性の顔、及び助手席に乗っていた奥さんの顔も映像に収めました! 言い訳が利かないようにホテルの中から出てくる様子と、そこがラブホテルであるという証拠も広角映像で捉えてあるので、問題ないです!』

YES! YES! 野郎、サービスタイムを目一杯使いやがったってことか。好き勝手に人の上さんを陵辱しやがって!

『ご苦労様でした。では、本日は切り上げてください。また、事務所に伺いますの。ありがとう!』

探偵さんの尽力に礼を述べたオレは、下唇を噛み締めながら次なる作戦を模索していた。って言うか、そろそろパンツ履こうよ…。

止めようにも止まらないスマイル・フェイス。しかし、早退していいって言ってたよね? セニョ〜ル!

「ようやく痛みも引いてきました。でも、いつ痛くなるかわかりませんので、今日は大事を取らせていただきます…」

「ああ、お大事に。帰る前にプロジェクトの資料を置いていってくれたまえ」

NOぉ〜! 忘れてなかったのね、セニョ〜ル!