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「浮気調査」  神奈川県横浜市 40代 女性  主婦  三村加奈子さん(仮名)より

第二回 確信


病院から家に帰るまでの道のりは、記憶も途切れ途切れでした。目を閉じると、あの出来事が鮮明に甦ってくる…。フラフラになりながら、どうにか家に辿り着いたときには、すっかり日も暮れていました。夕飯の仕度をしなきゃ。長年、続けてきている習慣って、どんなショックを受けても、カンタンに消えないものですね。ツライ、信じたくない、きっと夢に違いない。現実を受け入れることを私は徹底的に拒否しました。そんな事実を受け入れる余地が心の中にないことを知っていたから…。家のドアを開けるまで、すでに主人が帰ってきていたことに気付きませんでした。

「どうしたの? 遅かったじゃない」

心配そうな表情で、主人が言いました。私より先に帰っていたことにビックリしたせいもあったのですが、主人の顔を見ることができず、買い物の帰りに気分が悪くなって駅でしばらく休んでいたとだけ告げて、私は、逃げるように台所へ向ったのでした。

「夕食は済ませてきたからいいよ。それより、大丈夫なのか?」

と、主人。外で食べてくることはメールしてあったと言うのでチェックしてみたら、着信が残っていました。その時間を見ると、私が元町で目撃したてしまったあの出来事のわずか1時間後。ということは、きっと主人は、あの女と夕食を一緒に…。

「ご、ごめんなさい。また気分が悪くなってきちゃった。ちょっと横にならせてください。」

とても主人を見ることなんてできません。足元もおぼつかない状態で2階の寝室へ。私の心に残っていたわずかな主人への信頼が、あっという間に潰されてしまって。それは、浮気という言葉が持つ残酷さを実感した瞬間でもありました。出会ったときのときめき。つらくても幸せだった日々。長い年月を供にした信頼。そのすべてが崩壊していく。心が壊れていく。目を閉じて、女の顔がハッキリと浮かんできたとき、怒りの感情が湧きあがってくるのを感じたのでした。
冷静ではない私が憎しみを抱ける対象は、その女でしか有り得なかったんです。のど元まで競り上がってくる不快な吐き気。ショックが大き過ぎると涙って出てこないものなのですね。私にとっては、はじめての経験でした。逆に嘔吐は相当に激しかったのですが…。寝室に上がってきた主人は、本当に心配そうな感じで声を掛けてくれました。やさしい人なんです。
そのやさしさにつけ込んであの女は色目を使ってきたに違いありません。憎悪は増すばかりです。とても眠ることなんてできません。
午後10時、早く眠りについた主人の横で、私の目はだんだん冴えてきてしまいました。女への憎悪に身悶えする自分を抑えているうちに、疑惑はどんどん膨らんでいったんです。

あの女は誰? 

そして、私はついに人生ではじめての恥ずべき行為をしてしまったのでした。主人の携帯を見れば何かわかるかもしれない…。

いけないことなのはわかってます。

でも、ガマンできない! 

眠りの深い主人は、一度、寝てしまったら、めったなことでは起きません。目覚まし時計をセットしていても、毎朝、起きるのに苦労しているくらいですから。機械オンチの私は、自分で操作を覚えることなんて、とてもできないと思ったので、主人と同じ機種の携帯電話を買ったのでした。
そして、主人に使い方を習っているうちに、自分で扱えるようになってました。だから、主人の携帯をチェックすることは何の苦労もありませんでした。

罪悪感は消えない。でも、見たい! 

震える手を抑えてメールを開いたのでした。受信メールはすべて削除されていました。私のものも含めて。それほど几帳面ではない主人が、そういう細かい作業をいちいちしているのはおかしい。

しかし、そういう抜けたところがある性格だけに、送信メールの方は、削除されずに残されていました。そこにある文面は、間違いなくこの携帯電話から主人が送った内容です。そこにウソはありません。

そして、どう考えてもあの女が相手としか思えないメールを発見したのでした。日付は今日。同じ日に何通も送ってる。

相手の名前は『さやか』と登録してありました。

『週末が待ち遠しいよ! おやすみ』
『今日は楽しかったね。早くさやかの家に行きたい!』
『14時には元町に着くよ。おいしい物を食べようね!』
『前からさやかが欲しがってたバッグをゲット! 今度、持ってくね』

このところ、週末といえばゴルフ三昧の主人。その週の土曜日もゴルフに行く予定になっていたはず。

しかし、メールの内容から判断するとゴルフとは思えない。しかも、時間と元町という場所。

すべてが合致している。あの女が『さやか』? 

毎週、会ってるってこと? 

ということは、ゴルフに行くと言ってた日はすべて…? 

ああ、知らなければよかった。
携帯なんて見なければよかった。

でも、これでハッキリした。

主人は浮気をしている! 

主人の携帯を元に戻すことは何とかできたのですが、そこからベッドに行ったところで限界。眠りについたのではなく気を失ってしまった私でした…。