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「浮気調査」  神奈川県横浜市 40代 女性  主婦  三村加奈子さん(仮名)より

第一回 疑惑


専業主婦って聞くと、家に収まって毎日、楽な生活を送ってるようなイメージがありませんか? 

サラリーマンのご主人を持っている方は存じませんが、私が結婚した相手は実業化だったものですから、それこそ山あり谷ありの人生でした。

実業家といっても、小さな食品関係の貿易会社なんですが、結婚した直後に、いきなり会社を辞めて事業を興すと言われて…。何の相談もないまま、主人の地元である横浜の元町に小さな事務所を借りて、新しい挑戦がはじまったのでした。

主人がコツコツと貯めていた預金で、有限会社を設立するに当たっての資本金は何とかなったのですが、事業が軌道に乗るまでの生活費は、主人の方はもちろん、私の親類にもお願いして援助してもらってました。

家計は火の車。

毎日が不安で不安でたまらなかったのですが、朝早くから夜遅くまで頑張っている主人を見ていると、そんなこととても言えませんでした。

主な取引先は主にアメリカだったので、留学経験のある主人の英語力を活かせるいい仕事だとは思ってました。

それでも、家計簿に目をやると、ついため息をついてしまう自分に嫌気がさしてきたり。

でも、「今日はいい話があって、うまくいけば安定した取引ができそうなんだよ!」などと楽しそうに報告する主人の顔に、癒されることも多かったんです。

この時期は、まさに谷。

いつかいい日が来る。そう信じたかった。

そして、そんな私たちに転機がやってきたのは、日本中がお米不足で大騒ぎになった年でした。

その年、日本政府は、急遽、海外からの米輸入を決定。

主人が取引していたカリフォルニアの食品会社も、この輸入政策に便乗できたので、主人の会社は、一気に盛り返すことができたんです。

それからは、事業も順調でした。

親戚への借金も返して株式会社に成長。

今では、5人の従業員を抱えるまでに大きくなりました。

私はというと、それまで苦しかったせいか、反動で、けっこう贅沢をしてしまって。お金の使いかたが荒いと主人に怒られこともありました(笑)。

とにかく、それほどに、生活が楽になったということなんですが、振り返って考えると波乱万丈の結婚生活だったなあなどと思うこともありましたね。

ただ、苦労してきた分、お互いの信頼関係は強かったし、主人は、私だけを愛してくれているという気持ちは揺るぎないものだった。

少なくとも、あの日までは、そう信じていた自分がいたんですが…。


結婚して25年。専業主婦としての生活も安定していました。

私の健康面の問題で、子供はできませんでしたが、それでも幸せでした。

しかし、あの日は、私は見なければよかったと今でも思う主人の別の顔を目撃してしまったんです。

その日、元町に買い物に出かけた私は、偶然、主人の車を発見。

主人の仕事についてくわしく聞いたことがなかった私は、打ち合わせかなにかあったのかな、などと、とくに気に止めずにおりました。でも、買い物が多かったので、帰るつもりだったら送ってもらおうと思い、車の周辺にいるだろう主人の姿を探したのでした。

ほどなく、すぐ脇にある喫茶店から出てくる主人が目に止まったので、小走りで駆け寄ろうとしたそのとき、主人の後ろからついてくる若い女性が…。

私は、直感というか、反射的にというか、ふたりに何らかの関係があることに気付き、その場に立ち尽くしてしまったのでした。

その女性は、笑顔を浮かべながら主人の腕に飛びつき、楽しそうに話しながら、車の方へ。何もできずに見つめる私に気付くこともなく、ふたりで車に乗り込むと、あっという間に行ってしまったのでした。

今、何が起こったのか。私の頭はパニックに襲われていました。

いや、正確にそうだったのかはわかりませんが、全身のを氷で包まれたような悪寒とともに、めまいがしてきて。そのまま、まるでテレビをプツッと消したときのように目の前が真っ暗に。

目を覚ました場所は、病院のベッドでした。

看護婦さんの話では、道端で急に倒れた私を通行人の方が目撃して、救急車を呼んでくれたんだそうです。

幾分、冷静さを取り戻した私は、あの出来事が、夢であって欲しい。いや、夢だったに違いないと思うようになってました。

そうじゃなかったらと考えると、また、めまいに襲われそうになる自分に耐えられなくて…。