「正直者がバカを見る」
探偵をやっていて常日頃思うことだ。
こんなもの相手にしなければいいのに…。
しかし依頼人は「もし…」を考え、自分の中でその問題が大きく膨らんでいってしまう。
探偵へ持ち込まれる相談は時代に敏感に反応している。
とにかく出会い系サイトを媒介としたトラブル相談が多い。
サイトで知り会った相手を信じた結果強請られている、
金銭を貸したが返ってこない…。
中デモ多いのが、心当たりのないサイトの使用料等の不当請求問題だ。
「全然心当たりないのに支払い催促のメールが来た。どうすればいいのでしょうか。知らないうちにクリックし少しの間アクセスしてしまったのかもしれない」
依頼人の相談内容は大筋こんなものだ。
心当たりがないのなら放っておけばいい。
しかし、次々メールが送られてきて金額も大きくなり不安になって揺らいでしまう。
こちらがどれだけ勇気づけても「債権回収」「遅延損害金」等聞きなれない言葉が飛び込んでくると弱気の虫が疼き出す。
H氏の場合もそうだった。
身に覚えもないアダルトサイトからの7万円の請求メールが始まりだった。
悩みぬいた末、恐怖から指定口座に振り込んだ
。ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間。
今度は別の指定口座に70万円を上回る金額を支払えというものだった。
前回の業者から引き継いだ債権回収会社だという。
メールの内容を確認する。到底納得できるものではない。
H氏の不安は日増しに膨らみ、調査に乗り出すことになった。
探偵といえどこの問題を100%解明するのは難しい。
このような確信的詐欺行為を行う側は辿られぬようリスクヘッジを積み重ねている。
振込先となる銀行口座という痕跡を残しても辿られる頃には放棄しまた別の口座を使用する。
ただ、糸口は掴める。
調査を進め、指定された銀行口座の名義人が判明しさらにその人物の素性を調べていくと…。
さすがに驚いた。
NTTコミュニケーションズの男性社員であったのだ。
業界が業界だけにここでバッサリ終わりにはできない。
接触して事の真意を確かめた。
「通帳は盗まれたか紛失したのか自分にも分からない。
車に置いてあったのを盗まれたのかなあ。
とにかく勝手に使われていたんです」
彼の説明によるとこうだ。
家で眠っていたキャッシュカードがいまでも使用できるのかを確認するため銀行のATMに差し込んでみた。
使用できなかったので、窓口で理由を尋ねてみると、その口座に警察が介入しているのでストップをかけているとの事だった。
その結果、警察の取調べに応じることとなり自宅や会社のPCも調べられ、疑いは晴れたという。
「九州で引き落としされていたらしいのですが。警察にも疑われましが、私は無関係。被害者なんですよ」
嫌疑から解放されたためか、笑い声交じりの受け答えであった。
どうも釈然としない。
ただ例え彼が被害者であっても無関係とは言えない。
どんな経緯であれ、加担していることには違いないのだ。
また、このように犯罪に使用される可能性もあるわけで、通帳の管理責任というのも問われるべきだ。去年の話だが、不当請求メールが社会問題の主役にまでなったいまだからこそ、敢えて書かさせていただいた。
読者の皆様はどう判断されるか。
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