田島さんみたいな素敵な人がちゃんといるじゃない! 私はイライラしていました。
うれしくて田島さんのことを電話で親に話したんです。出会った経緯も…。「出会い系で会う男なんてロクなもんじゃない」というのは、母のセリフでした。もちろん、私は反論しました。いくら親だからといって、許せない。
田島さんの何がわかってるっていうの? 私は、田島さんと描いていた未来予想図を母にも聞かせました。ラーメン屋を経営しようとしてる実業家だということ。やさしくて分別のある大人だとうこと。
そして、何より、私を愛してくれていること。堰を切ったように言ったんです。
「お金はどうしたの? お店をはじめるとなったら、かなりのお金が必要になるじゃない。その人、お金の余裕ある人なの?」
私は、言葉に詰まってしまいました。私も用立てたとは言えなくて…。思えば、強引に田島さんを信じようとして、ムキになってたのかもしれません。
母とこのやり取りをしていた日は、田島さんが、お金を返すと約束してくれた日を過ぎていたのでした。
しかも、田島さんからは何の連絡もなし。
でも、信じたい! ウソだったなんて、あり得ない!
結局、母とは口げんかみたいな感じになり、電話を切ってしまいました。そのまま、田島さんの携帯番号をプッシュした私。相変わらずドライブモード。私の着信履歴は残ってはずなのに、どうして連絡をくれないの?
寝れませんでした。あれから、何度、電話をしても、ドライブモードのまま。田島さん、本当にどうしちゃったの? 勢いで何でもやってしまうところがある人だから、何かトラブルに巻き込まれているのかもしれない。私は真剣にそう考えました。居ても立ってもいられない。眠れないまま朝を迎え、その足で、田島さんと幸せを作ることになっているお店に行った私。
店に行けば、田島さんに会える。思えば、お金を貸した日以来、3日も会ってない。田島さんに会いたい。私の気持ちは複雑に揺れていました。
お店は、すでに改装中でした。施工業者の人たちが忙しそうに作業をしていた。私は、大きく息を吐き、安心したのでした。ちゃんとお店が出来上がろうとしている。田島さんは、きっと、私の話なんて聞く暇がないほど忙しかっただけなんだ。とにかく、ホッとしました。落ち着きを取り戻し、私は、しばらく工事の様子を見ていたんです。
すると、そこへ、ひとりの男性がやってきました。業者の人たちが挨拶している。アレっと思いました。誰なんだろう。見ていると、業者の人たちにあれこれ指示を出してる。かといって、格好は明らかに工事関係の人じゃなかった。ということは、お店の関係者?でも、田島さんはひとりで店をだそうとしていたはず。パートナーとなるのは私だけだったはず。
言いようのない寒気が全身を覆い、血の気が引いていくのがわかりました。
聞くのが怖い。
でも、聞かなければ・・・。
私は、店の中に入っていき、その男性に声をかけたのでした。
「あのう、すいません。こちらのお店の方ですか?」
相手は、少し驚きながらも、そうだと答えたのでした。
「あ、じ、じゃあ田島さんのパートナーさんなんですか? 私、田島さんの…」
「田島? 田島って誰ですか? ここは私の店で、田島なんていう人のパートナーなんかじゃないですけど。何か勘違いされてるんじゃないですか?」
騙された!
そのときの私の気持ちがどんなだったかなど、どう表現していいのかわからない。強烈にショックでした。
ただただ呆然としていました。
心臓が体の中から抜け出て手の平で鼓動しているかのような感覚だった。
心と体がバラバラになったような…。
そう。
私は騙されてしまった。
しかし、現実を受け止められないまま、私は、しばらくその場に立ち尽くしていました…。