田島さんってスゴいなあ、というのが第一印象でした。30歳という若さで独立してお店を経営してるんですから、とっても、大人な感じがして、いくらでも甘えることができたんです。
それはもう、仕事の愚痴や日ごろの孤独感などを素直にぶつけてました(笑)。そんな子供の私なのに、田島さんも経営の難しさや仕事の苦労を打ち明けてくれたりして。人として認められたというか、とってもうれしかったのを覚えています。会いたい…。そういう気持ちになるまでに、それほど時間は掛かりませんでした。話を持ち出したのは私の方だったと思います。
あれは、メールのやり取りがはじまってから1ヶ月くらい経ったころでした。週末の日程を合わせてデートをすることになったんです。仙台の街をドライブしようって。待ち合わせは、青葉区にある仙台駅近くの『PRONT』。約束の12時前に着いた私は、ドキドキしながら田島さんの到着を待っていました。そして、約束の時間。ジーンズにTシャツ、黒いジャケットを着た背の高い男性が入ってきました。
あ、あれがもしかして田島さん! 格好いい!
目をキラキラさせながら、手を振ってみたら、その男性は、笑顔で応えてくれました! と、思ったら、視線が微妙にズレてる。振り返ると私の後ろに座っていた女性も大きく手を振ってた。
人違い。
その男性は、後ろの女性の彼氏だったみたいでした。ちょっとガッカリ。
すると、私の携帯が鳴ったのでした。着信名は田島さん。デートに備えて、お互いの電話番号を教え合っていたのでした。
「あ、田島です。はじめまして。今、お店の前なんだけど、車を置いておけそうもないので、出てきて欲しいんですよ」
「わかりました。丁度、コーヒーを飲み終わったところなんで、スグに出ます!」
外に飛び出した私は、田島さんの車を探してキョロキョロ。しかし、それっぽい車はどこにも見当たらなかったんです。店の前には汚い軽トラックがあるだけ。携帯は通話中のままになっていたので、聞いてみたんです。
「田島さん、どこに居るんですか? 今、店の前に立ってるんですけど…」
「見えますよ。左向いてください!」
言われたとおりに左を向いたら、その軽トラックから手を振っている男性が。え、この人が田島さん? 田島さんは30歳のはずでしたが、見た目はもう少し上な感じ。タイプで言うと、若くした地井武男みたいな人でした。
「ハハハ、いやあ、ビックリしたでしょ? 汚くてゴメンね。でも、これがオレの看板だから。全部、知ってもらいたかったんだよ」
ドアの部分には『たーさんラーメン』と書いてありました。いきなりだったから、正直、驚きました。でも、そういう部分を見せてくれたことが逆にうれしかった。親に買ってもらった高級車を乗りまわすおぼっちゃまたちも知り合いには多かったですけど、田島さんの軽トラックの方が何倍も格好良く感じた。私も大人になったのかなって思ったりして(笑)。車に乗ると、車内には野菜や麺の匂いが充満していました。これが、田島さんの匂いなんだなあ…。
運転席の男らしい横顔を見ながら、私は、そんなことを考えていました。